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オル太の《オルガネラ》を巡って|吉岡恵美子



オル太の《オルガネラ》を巡って

 金沢21世紀美術館での企画展「内臓感覚―遠クテ近イ生ノ声」は、人間の諸感覚の中でもより原始的・根源的な「内臓感覚」を手がかりに、その内なる感覚に響き、語りかけ、新たな知覚の目覚めにつながる現代の表現を紹介したものだが、オル太は出品作家13組中、最年少で最大人数の1組であった。全員が1980年代生まれのメンバー7名からなるアーティスト集団オル太は、本展において、古代からの生命、記憶、リズムの連なりを想起させる新作インスタレーション《オルガネラ》を提示した。巻貝にミジンコ、鶏や牛などの生命体や、内臓などの体内モチーフに、過去から現在の記憶が埋まる土層などが渦巻きのようにうねり、ねじれながらくの字に伸びる巨大な彫刻である。「細胞小器官」という意味をもつ「オルガネラ」は、大きな生命体を構成する小さな一部でありながら、それ自体が様々な機能と構造を持った小宇宙といえる。
 4ヶ月にわたる会期中の毎金・土・日曜日および祝日に、オル太はこの光庭の《オルガネラ》にてパフォーマンスを行った。朝から晩まで断続的にメンバーが会場に入り、90分程のパフォーマンスを行い、去っていく。彫刻に絡みながら、徘徊し、地を這い、飛び跳ね、うごめき、佇む。地に頭を当て、倒立する。三葉虫の甲羅を背負い四つ足で這う。時には細胞同士が接触し、また鑑賞者の声や動きを受け止める。1日の中でも、そして季節の移り変わりを通じても、気候は大きく変化する。豪雨を浴びながら、あるいは真夏の太陽のもと灼熱のコンクリートとFRPの上で、無言の叫びや祈りにも似た即興の動きを続けた。オル太ひとりひとりは、小さき細胞として単純ともいえる身体の動きを繰り返す中、人間を含む生命体を貫く「内臓」と、自然/宇宙のリズムの双方に「接続」しようとしていた。
吉岡恵美子(金沢21世紀美術館 キュレーター)