Format
performance
Public Meeting
小宮麻吏奈、メグ忍者が企画するパフォーマンス『campfiring』。
スーザン・ソンタグによる「《キャンプ》についてのノート」に書かれた58のテキストを観客と共に朗読し、アーティスト、詩人、キュレーターによるハプニングの要素を伴ったパフォーマンスが繰り広げられる。また、撮影は行わず、その痕跡を新聞として発表する。コロナ禍においてキャンプの需要が増えている。グローバルなインターネット空間から離れ、ローカルな身体を闇の中に置く。その場で、またはオンラインなどの遠隔で各々の想起された火を起こす。その様子は実際に見ることによってのみ知ることが可能。
出演:青木彬、うらあやか、カニエ・ナハ、記録係(関真奈美+玉木晶子)、黒田大スケ、小宮麻吏奈、田上碧、武本拓也、メグ忍者、山内祥太、山本悠、Ad Mornings(苅部太郎、土本亜祐美、大和由佳、Zoé Schellenbaum、Jang-Chi、他)
※記録係、 黒田大スケは会場には不在。
日時:2020年9月17日(木)22:30ー翌5:00 ※雨天決行、荒天中止
場所:都内某所(野外) ※ご予約後詳細をメールにてお知らせ
参加費:2000円(ブルーシート、フード付き)、予約制(オンラインでのみ販売)
入場制限:50人
企画: 小宮麻吏奈、メグ忍者 (オル太)
運営:オル太
都会の真ん中に埋め立てられた人工の島には「夢」や「平和」など、聞こえの良い言葉がつけられていた。かつてはゴミの臭いで蝿が飛び回っていたり、もう一方では捕虜や戦犯の一次収容所だった。そして戦争の遺構は茂みの中に隠された。キャンプ場では何人かの少数のグループがBBQをしていた。
スーザン・ソンタグは『《キャンプについてのノート』の中で、「キャンプ」的な文化について58の項目の中で記述していた。人工的で都会的な感覚としての「キャンプ」を。
感覚を——とりわけ生きていて力強い感覚を——言葉でからめ取るためには、われわれは断定を避け、柔軟にふるまわねばならない。(スーザン・ソンタグ『《キャンプ》についてのノート』、高橋康也、出淵博、由良君美、海老根宏、河村錠一郎、貴志哲雄訳)
その後に続く58の項目から、何を絡めとることができるのか。少しずつ動いていく。誰かの声が聞こえる。反応は朝まで連鎖し続ける。止まっているのか動いているのか分からない。何かが起きているようで起きていない。時は少しずつ進む。見えない場所で見えない何かが行われている。
シャレク あたくし、とうとうやりとげたわ、ここまでやっと来たのだわ。ここでもあたくしの興味をひくのは、なんと言っても総体的な人間性、これ一つ。でもこれ、この情景、これが一体、文化だろうか?これを見ていると焼き打ちをうけたウィーンの下町の商店街を思い出すわ、破壊されたのも当然じゃないかしら。この哀れなことといったら、写真ではとっても出せない代物だわ。……(カール・クラウス『人類最期の日々』、池内紀訳)
国家や都市がもたらす画一化や整備された社会の秩序の中においていかに異変に気付くことができるか。カール・クラウスが1899年から1912年まで創刊した評論雑誌「Die Fackel(炬火)」は当時の社会を諷刺によって伝えていた。投書や街の声から記事化し、のちに演劇として『人類最期の日々』に集約された。
そこに集まった人々が起こそうとする火は、どのように闇に灯るだろうか。詩性やアイロニカルな批判、同化への抵抗における炬火が立ち現れる。
campfiring開催中、出演者のパフォーマンスを版画を用いて記録した。
1 パフォーマンス開始前
来場者には養生ブルーマットを身長程の長さに切って配られた。焚火のまわりを囲うように、来場者はマットの上に横たわっていた。
2 記録係
記録係
記録係は会場にはおらず遠隔からパフォーマンスが作られた。23:00,2:00,4:00の三回異なったものが観客達によって演じられた。他の作家との偶然的な繋がりが幾度か発生していた。
私は三回のパフォーマンス後、一枚の版に三回画を彫った。スマートフォンの中に映される文字、出演者の山本悠、赤いベスト、燃焼の仕組みの手紙、火のついた細い棒をモチーフにした。
3 うらあやか(1)
粘土に関する自身の記憶やその場で感じたことをつぶやきながら陶土が参加者に手渡される。参加者は粘土を指先でこねながら中央の焚き火とユラユラ動く作家の動きを眺めていた。
4 田上碧
キーという鳴き声が聞こえた。焚き火の近くでパフォーマンスが終わって間もない時で、火の近くで来場者が会話を楽しんでいた。キーという鳴き声は猿のような鳴き声で、ここにいるはずのない生き物だ。耳を澄まして声のする方へ行く。焚き火から離れ、あまり光の当たらない一本の木に辿り着いた。木の上から声がする。ラバー軍手を付けた手が、一瞬、幹に手を回すのが見える。耳を澄ませばキーという声と一緒に、ピピピピやビビビビのような虫の声も聞こえた。フォーという鳥の声も聞こえた気がしたが、もはやどの声が田上碧の発する声なのかは分からなくなっていた。光の少ない暗闇の中に、無数の音が聞こえてきた。
5 Ad Mornings(1)
焚き火の周りには短形のキャンバスが一周置かれていた。キャンバスには番号が振られていて、時間が描かれていた。Ad Morningsはcampfiringを記録する。それらのキャンバスに記録していた。三人が、そのキャンバスにしゃがみ並んで書いていた。中心の焚火はパフォーマンスを行ううらあやかを照らしていたが、同時に記録するその人達も照らされ、大きな影が伸びていた。
6 青木彬
青木は「You must talk campy. client」と書かれたステッカーを公園の看板に貼り、clientについてうらあやかと話始めた。キャンピーに話してと言う青木に、うらは「キャンピーに話すのは難しい、パーキーになってしまう。」と言った。
7 黒田大スケ
作家は終始、存在感を消しパフォーマンスを行っていた。観客は渡された食べ物を中央の焚き火に入れるよう指示された。実は私はそのパフォーマン中に会話を遮るように手を叩く役を演じさせられていたのだが、誰も気づいていないようだった。
それを観て中央の火、手のひら、きのこを画面に彫った。
数時間後「あれは本当の黒田さんじゃなくて全然違う人なんだよ」という会話が聞こえてきた
8 武本拓也
動いているのか止まっているのか分からないような速度で会場を行き来する武本拓也のパフォーマンスは風景と一体となっているため、見失ってしまうことがあった。ようやく見つけたと思った時に、遠くの稲光で周囲の木立と作家のシルエットが同化する瞬間に立ち会った。
9 うらあやか(2)
木の棒を焚き火にかざしながら進行する語りの中で「火と手をつないでいる」とうらあやかが言ったように、火の動きに誘導されながらぐるぐると周囲を歩き回っていた。握った木の先からは煙が立ち昇っていた。
10 山内祥太
山内は、華氏451をキャプチャーし、そのキャプチャー写真を1枚1枚燃やす様子をプロジェクターでスクリーンに投影した。次々燃えていく華氏451のキャプチャーの燃えかすとなった写真があたりに散らばっていった。
11 小宮麻吏奈
服のような布のようなものを纏ってやって来た。やがて首を布の中へ引っ込め、頭も隠れる。布の内側から照明が照らされた。光は身体の線を仄めかすように曖昧に服(布)の表面に映し出していた。着るものについて、裸について、膜について、穴について、川について、境界について語られた。溶け合うのではなくて、増えるのだという言葉が印象的だった。
12 山本悠
山本悠のオールナイトゆうゆうワイド大放送は最後、誰もいない炊事場で放送を終えた。オンライン会議を、終える時、ゆっくりフェードアウトしながら切断できる機能がzoomにあったら良い。そのような事を最後言っていた。
13 カニエ・ナハ
中央でうらあやかが焚き火を起こしていていた。作家はその焚き火のすぐ横に寝た。火との距離をじっくり決めているように見えた。会場でカセットテープに録音され、貯められた音声を聞きながら手話を始めた。テープの音声が一番新しい音を再生し終わり作家が目を開け起き上がる頃には空は少し明るくなり始めていた。
私はうらあやかの足元と細い棒、実際の火はではなく炎のようにも見えるカニエ・ナハの手を版画に彫った。
14 Ad Morning(2)
全てのパフォーマンスが終わると、Ad Morningが新聞を配りにやって来た。彼らは、今、起きていることを常に記録し続けていたので、今さっきの出来事さえも含めて、今印刷し終わりここへ来たのだと思う。地面に養生ブルーマットを敷いて、その上に三つに分けられた紙の束が置かれた。よく見ると、印刷されている内容がどれも異なるようだった。三つの束から一枚ずつをAd Morningは手に取り、筒状に丸めて糸で結んで閉じた。そのうちに、来場者も同じように新聞を三枚とって同じようにした。筒状の新聞が来場者に配られた。
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